鍋島献上の儀
鍋島献上の儀とは?
伊万里市の大川内山は、 延宝3年(1675年)から廃藩置県(1871年)まで鍋島藩御用窯が置かれ、将軍家や諸大名、朝廷等への献上品として、日本磁器の最高峰と称される「鍋島」を生産し、三百有余年の歴史と伝統を受け継いでいます。 産地においては、 先人たちの偉業と歴史に感謝しつつ、 技術の粋を結集 一した鍋島の伝統と文化を体験し、 新しい伝統文化を育んでいくため、 平成元年から鍋島藩窯秋まつりの一環で、九州各県知事や県内の市長、 全国の名城所在の首長等に鍋島の献上(鍋島献上の儀)を行っています。
献上品はロクロ、絵付け、 登り窯での焼成(36時間)など、 それぞれの窯元が得意の工程を分担し、 丹精込め、 すべて手作りで仕上げた作品です。 商品として価値はつけられませんが、今なお藩窯の伝統と技術を受け継ぐ窯元の技術の粋と情熱を結集し、作り上げます。
奉納式
日時:11月3日 午前9:00〜
場所:伊万里大川内山「日峯社」
奉納式の後は、伊万里有田焼伝統産業会館の玄関を入った直ぐのホールに展示しています。
筆供養
日時:11月4日 午前10:00〜
場所:伊万里大川内山「無縁仏前広場」
色絵桜樹文立葵 瓶子
デザインの背景
献上先は福島県の都市(予定)で、コロナ過でまだ献上出来ておりません。献上は来年の春以降に予定
絵柄はその都市の花である立葵を描いております。桜の時期に献上したい意向から、伊万里焼伝統紋様の桜を上部に描いています
下絵付け
窯入れは、各窯元で制作した物を持ち寄り登り窯へ搬入します
焼き物の種類により、どの窯にどれを入れるかは窯の焼け具合を考えて配置します
一の窯の真ん中奥が良いものが今までの経験値で分かっているので、献上品はその位置に配置します
登り窯はその時々で気温や湿度が違うので、実際は焼いてみないと分からないところもあり
何回やっても難しいところがあり、緊張の中ですすみます
窯入れ
下絵を伝統の技術で絵付けします
線入れは細い筆で細かなところまで丁寧に書き込みを行います
その後で、濃筆で絵の中身を色つけします、濃の入れ方で濃淡を表現するために重ね塗りを施します
職人の技を要する繊細な技術が伊万里大川内鍋島焼を支えています
火起こし式(愛宕神社)
大川内山の中腹にある愛宕神社(火の神様)で火打ち石を使い、種火を起こして登り窯まで松明を担いで持ち帰り、神事の後に火入れを行います
愛宕神社は歩いて15分ほどかかる険しい山道でになり、火を絶やさぬように大事に種火を持ち帰ります
神事、火入れ式
伊万里神社の宮司が祝詞をあげ関係者の参拝の後、火入れ式が執り行われます
火入れから丸2日間に渡り昼夜通して登り窯を焚き続けます
窯焚き
メインの窯で約20時間かけて窯の温度を600度ぐらいまで上げて行きます
一の窯の温度を確認しながらジワジワと温度を上げて行かないといけないので、長老達の経験と感で管理しながら薪を入れるタイミングを計り進めていきます
薪は赤松を使用することで燃焼力をつけます
一の窯 窯焚き
一の窯が一番良い焼き物が焼けるので、メインになる献上品をここで焼きます
窯の中でも、今までの経験からどの位置においた方が良いかを長老達は経験値から分かっているので指示に従い配置していきます
上り窯は薪で炊き上げるので、商品に灰などがかからない様にボシと呼ばれる、焼き物を保護する容器に入れて焼きます
二の窯 窯焚き
二の釜以降は各窯元が持ち寄った作品を焼きます
大川内焼の特徴である青磁や染付などを各窯元が持ち寄った商品が焼かれます
三の窯 窯焚き
三の釜以降は各窯元が持ち寄った作品を焼きます
大川内焼の特徴である青磁や染付などを各窯元が持ち寄った商品が焼かれます
三の窯が焚き終わるのは翌日の深夜になります
窯出し(一週間後)
窯出しは火を止めてから一週間時間をかけて冷やしていきます
急激に冷やすと焼き物が割れたりヒビが入ってしますので、時間をかけて冷やしていきます
窯出しが一番緊張する瞬間で、登り窯は視線相手の焼き方になるので、温度や湿度に左右され同じ焼が常にできるとは限りません
関係者全員緊張の中、閉じていた窯のレンガを外していきます
粘土と炎の芸術品は商人達の弛まぬ努力で引き継がれていきます
上絵付け 赤絵
登り窯で本焼きした壺に、その上から上絵を付けます。
赤絵や緑絵など上絵付けを行った後に色により数回に分けて窯で焼きます。
完成品 窯出し
上絵付けを数回繰り返し焼き、献上品は焼き上がります。
仕上がりを窯から出すときは、緊張と期待の気持ちが入り混じった瞬間になります。
満足がいく焼き上がりの瞬間は喜びの気持ちが満ち溢れます。
献上式これまでのあゆみ
献上年月日 | 県・市名 | 知事・市長御氏名 | 献上瓶子名 |
---|---|---|---|
平成元年10.30 | 佐賀県 | 香月熊雄 知事 | 松竹梅紋瓶子 |
〃元年10.30 | 伊万里市 | 竹内通教 市長 | 色絵鍋島紋瓶子 |
〃2年11.1 | 福岡県 | 奥田八二 知事 | 色絵萩絵紋七寸高台皿 |
〃2年11.1 | 武雄市 | 石井義彦 市長 | 色絵鍋島紋七寸高台皿 |
〃3年10.28 | 熊本県 | 福島譲二 知事 | 色絵牡丹紋七寸高台皿 |
〃3年10.28 | 唐津市 | 野副豊 市長 | 松竹梅紋瓶子 |
〃4年10.27 | 長崎県 | 高田勇 知事 | 鍋島紋様瓶子 |
〃4年10.27 | 在福岡アメリカ領事館 | 鳳凰紋瓶子 | |
〃4年10.26 | 佐賀市 | 西村正俊 市長 | 錆釉青磁芦絵皿 |
〃5年10.25 | 大分県 | 平松守彦 知事 | 色鍋島紋様瓶子 |
〃5年10.29 | 鹿島市 | 桑原允彦 市長 | 色絵松竹梅紋瓶子 |
〃6年10.26 | 佐賀県 | 井本 勇 知事 | 色絵松竹梅紋瓶子 |
〃6年10.28 | 多久市 | 百崎素弘 市長 | 高台皿色絵藤袴 |
〃7年10.27 | 宮崎県 | 松形祐尭 知事 | 色絵鳳凰紋瓶子 |
〃7年10.25 | 鳥栖市 | 山下英雄 市長 | 色絵松竹梅紋瓶子 |
〃7年10.26 | 伊万里市 | 川本 明 市長 | 色絵橘紋瓶子 |
〃8年10.30 | 鹿児島県 | 須賀竜郎 知事 | 松竹梅紋瓶子 |
〃9年9.25 | 沖縄県 | 大田昌秀 知事 | 梅紋瓶子 |
〃9年11.29 | 伊万里商工会議所会頭・上滝長久 | 色絵芙蓉手紋瓶子 | |
〃10年10.15 | 通商産業大臣・与謝野馨 | 色絵芙蓉紋瓶子 | |
〃11年10.15 | 在福岡大韓民国領事館総領事・徐 賢變 | 菊紋瓶子 | |
〃11年10.20 | 佐賀神社・宮司 草場昭司 | 色絵菖蒲紋瓶子 | |
〃12年10.13 | 大韓民国文化観光部・金 ハンギル | 色絵黄梅菊紋瓶子 | |
〃13年10.15 | 中国領事館・斉江 | 色絵岩牡丹紋瓶子 | |
〃14年5.23 | 中国大連 | 牡丹絵紋瓶子 | |
〃15年10.20 | 伊万里市 | 塚部芳和 市長 | 七寸高台皿 |
〃16年10.31 | 佐賀城本丸 | 古川 康 知事 | ひさご紋瓶子 |
〃17年10.17 | 小倉城 | 末吉興一 市長 | 色絵鶺鴒紋瓶子 |
〃18年10.27 | 熊本城 | 潮谷義子 知事 | 色絵牡丹紋瓶子 |
〃19年10.12 | 国宝姫路城 | 石見利勝 市長 | 青海波色絵牡丹文瓶子 |
〃20年10.21 | 島原城 | 吉岡庭二郎 市長 | 色絵青海波牡丹文瓶子 |
〃21年10.13 | 国宝彦根城 | 獅山向洋 市長 | 色絵青海波宝尽文瓶子 |
〃21年10.24 | 伊万里神社・宮司 | 加志田恵久 | 色絵橘文瓶子 |
〃22年10.18 | 杵築城 | 八坂恭介 市長 | 色絵紗綾型石榴文瓶子 |
〃23年10.18 | 国宝松本城 | 菅谷昭 市長 | 色絵牡丹紋瓶子 |
〃24年10.16 | 平戸城 | 黒田成彦 市長 | 色絵桜樹文瓶子 |
〃25年10.11 | 国宝犬山城 | 田中志典 市長 | 色鍋島桜宝尽文瓶子 |
〃26年10.11 | 松原神社 | 鍋島家 鍋島美茂様 | 色絵杏葉牡丹唐草文様瓶子 |
〃27年10.14 | 総理官邸 | 安倍晋三総理大臣 | 色絵鍋島文様尽し瓶子 |
〃28年10.11 | オランダ大使館 | アルト・ヤコビ大使 | 間取吉祥チューリップ唐花文瓶子 |
〃28年11.9 | 佐賀城本丸 | 山口祥義 知事 | 色鍋島外濃牡丹花散し瓶子 |
〃29年10.3 | 国宝松江城 | 松浦正敬 市長 | 色絵青海波雪輪花文瓶子 |
〃30年10.10 | 佐賀県唐津城 | 峰達郎 市長 | 色絵石榴文瓶子 |
令和元年10.9 | 愛媛県松山城 | 野志 克仁 市長 | 色絵松絵椿文瓶子 |
〃2年10.19 | 岡山県岡山城 | 大森雅夫 市長 | 色鍋島三柑文瓶子 |